こんにちはアラフィフ独身介護士のミノタケです。前回の2022年に読んで面白かった本(前編)の続きとなります。
前回で取り上げた本は、
1.「孤独の宰相 菅義偉とは何者だったのか」 柳沢高志・著 文藝春秋
2.「50代で自分史上最高の身体になる自重筋トレ」 比嘉一雄・著 青春出版社
3.孟嘗君 宮城谷昌光・著 講談社
4.DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール ビル・パーキンス著 ダイヤモンド社
の4冊でした。興味を覚えたらご覧いただけると幸いです。さて続きを。
5.「総理の誕生」 阿比留瑠比・著 文藝春秋
安倍晋三氏というと、祖父が岸総理、父が外務大臣として長年活躍した安倍晋太郎と政界のサラブレッドであり、顔立ちからもどことなくお坊ちゃん風の印象を持っている人も多いと思います。著者は政治部記者として移動して来て出会う前の安部氏の印象も同様だったようです。ですが、実際に会った際に確かにお坊ちゃん風だが「どこか違う」という著述をしています。それは長年の持病持ちだったり(人の痛みが分かる)、自身の理想を求めて自民党内でも異端的なスタンスで地道に土台を積み重ね育ててきたことが描写されていきます。
6.「大往生したけりゃ医療とかかわるな」 中村仁一・著 幻冬舎新書
2021年のこのブログでも文末のアフィリエイトネタに取り上げてました。
この本を読む前に読んでいた本「LIFE SPAN」が「老化は病気」という立ち位置で「人として生きられる限界まで、最大のパフォーマンスを発揮し続けられることを追求する」という趣旨であるのとは真逆に「死を受け入れ穏やかに、無理せず逝きていく」とでもいうような本となっています。この本の副題「『自然死』のすすめ」からも姿勢がうかがえます。先行きの見えてきたアラフィフのミノタケには非常に面白く、興味深い本でした。
著者は晩年を特別養護老人ホーム、いわゆる特養の常勤医師として長年勤められその体験からそれまで医師としてキャリアを積みながら感じてきた疑問に確信を得てそれを実践されてきた方です。
他にもたくさん示唆に富む話が散りばめられています。図書館でも古本でもなんでも良いので「生き方」「活き方」「逝き方」に関心のある方は手に取ってみることをおすすめいたします。
7.世界2.0 メタバースの歩き方と作り方 佐藤航陽・著 幻冬舎
今も咀嚼しきれてないのですが、「メタバース、メタバース言うけどなんなん?」という方にオススメしたい本です。ミノタケがこの本に興味を持ったのは「メタバースとか言ってるけど、過去のセカンドライフや今あるMMOとかとどう違うんだろう?わざわざこんなに盛り上がっているのは、なんとなく自分自身が概念的な認識を間違ってる気がする」と違和感を覚えて理解を深めたいと思っていたところにYoutubeでホリエモンこと堀江貴文氏と著者の佐藤航陽氏の対談する様子を見て、「この人、ちょっと違うぞ!この人の本を読めば理解が深まる気がする!!」と思ったのがきっかけです。この方の「お金2.0」っていう本も読んではいたんですけどね(笑)
この本では色々面白いことが書いてあるのですけど、以下の部分も興味深かったです。
前回で取り上げた本は、
1.「孤独の宰相 菅義偉とは何者だったのか」 柳沢高志・著 文藝春秋
2.「50代で自分史上最高の身体になる自重筋トレ」 比嘉一雄・著 青春出版社
3.孟嘗君 宮城谷昌光・著 講談社
4.DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール ビル・パーキンス著 ダイヤモンド社
の4冊でした。興味を覚えたらご覧いただけると幸いです。さて続きを。
5.「総理の誕生」 阿比留瑠比・著 文藝春秋
前編で取り上げた「孤独の宰相 菅義偉とは何者だったのか」は菅政権でしたが、菅政権は前首相の安倍晋三の政権を引き継いだものでした。自然、前政権に興味を覚え又、衝撃的な銃殺事件もあり手に取りました。
安倍晋三氏というと、祖父が岸総理、父が外務大臣として長年活躍した安倍晋太郎と政界のサラブレッドであり、顔立ちからもどことなくお坊ちゃん風の印象を持っている人も多いと思います。著者は政治部記者として移動して来て出会う前の安部氏の印象も同様だったようです。ですが、実際に会った際に確かにお坊ちゃん風だが「どこか違う」という著述をしています。それは長年の持病持ちだったり(人の痛みが分かる)、自身の理想を求めて自民党内でも異端的なスタンスで地道に土台を積み重ね育ててきたことが描写されていきます。
p.29 安倍やその同志たちの理念的現実主義的な安全保障観や国際感覚、また連合国軍最高 司令官総司令部(GHQ)の影響から脱しようとする歴史観などは、自民党内でも明らか 非主流派そのものだった。自民党は長年、保守政党を名乗ってはいても、実のところは 思想性など関係なく現状追認と既得権益保護をモットーとする政党だった。また、政治家としての戦術家的な面もそこかしこで描写があり面白いです。
安倍政権は二期あり、理想に走って瓦解した一期とその反省に立って長期政権につながった二期との違いも描かれてました。p.66 この日の首脳会談は、午前と午後に分かれて二度行われた。午前の部では金正日から拉 致について謝罪も明確な説明もなかったため、昼の休憩時間に安倍が、盗聴されていることを承知の上で大声で小泉に迫ったことはよく知られている。「午後の会談でも謝罪がないようなら、平壌宣言への署名は見送り、席を立って帰国すべきです」午後二時すぎに再開された会談で、金が「拉致は遺憾なことで、率直にお詫びしたい」 と表明し、両首脳は予定通り平壌宣言に署名しただが、その文面に「拉致」の二文字は盛り込まれなかった。
あまり引用ばかりするのはどうかと思いますが、色々面白い当時の政治家や官僚の様子などが描かれているのでもう少しだけ。p.143 何かを選択するとは何かを捨てることだと実感した。(中略) 思想家ではない政治家に求 められるのは、理念や理想をあくまで追求することではなく、現実の世界で結果を出すこ とだ。そういう大きな判断を政治家はしていかなくてはいけない」(二〇〇〇年五月十五日 付産経新聞朝刊)理念的な保守的信条を持ちつつ、政治的行動はどこまでも現実主義的な現在の安倍の姿 と重なり合う。私はこのときだけではなく、その後何度も安倍が「政治は結果だ」「政治家は思想家であってはならない」と語るのを聞いている。
p.146 「安倍さんが首相で麻生さんが外相だった時代は、本当に外交がやりやすかった。政治家 はよく「早く協議をまとめろ」と言うものだけど、急いで決着をつけようとすると相手に 足元を見られ、その主張を多く飲まざるを得なくなる。 その点、安倍・麻生ラインは決して 「まとめろ」とは言わなかった。 むしろ、「相手がそう出るなら妥結しなくてもいい」 という姿勢だったから、事務方も慌ててカードを切る必要がなく、交渉を優位に進めやす かった」
p.213 「国際会議で各国首脳は、みんな自分の主張しかしないから、『和をもって尊しとなす』 の日本は意外とまとめ役になれる」安倍は帰国後、周囲にこう語った。安倍の仲裁発言に各国首脳がいかにほっとしたかは、 首脳会議終了後、安倍が対露制裁慎重派のレンツィからはハイタッチを求められ、本心では収拾をつけられずに困っていた制裁積極派のオバマからは、初めてハグ (抱擁) されたことからも分かる。
p.235 「財務省は、経済が分かっていない。特に(予算編成を司る主流派の)主計局あたりは、集めた税を再分配することしかやっていないから、生きた経済を分かっていない。彼らには その必要性がないからね。私も最初は『まさか』と思ったけれど、いろいろ彼らと話をしていて財務官僚が経済を知っているというのは違うと分かった。財務省内には消費税引き 上げ一辺倒のやり方に疑問を持つ人もいるだろうが、それは言えないんだ」
中国政府は、共産党一党支配の官僚社会である。そのため、日本について「これこれで「攻める」と決めると、首脳や外相クラスから各国大使、幹部軍人に至るまで時と場所を 選ばず、同じ論理で同じように批判する。その結果、場違いで硬直的な対応を招いて自滅することがあるのだ。「孤独の宰相」の時も書きましたが、政治の世界に疎いミノタケには興味深く、色々学べて面白かったです。読み終わった後に著者の別の本を買い求めましたが、こちらは積読になってしまってますね(^^)。
安倍は、これとは別の国際会議で、ある中国高官に行き会った際、だしぬけに話しかけてみた時の相手のパニック状態についてこう語ったこともある。
「まるでロボットみたいだった。最初は固まってしまい、数秒後にやっと話し出したと思ったら挨拶もろくにしないまま『歴史に鑑み反省し…………』といつもの公式発言を始めた。 彼らはあくまで党官僚であって政治家ではないね」
6.「大往生したけりゃ医療とかかわるな」 中村仁一・著 幻冬舎新書
中村 仁一
幻冬舎
2012-01-30
この本を手にしたのは2014年で、読み切ったのは著者の亡くなった2021年だったはずなので「2022年に読んだ本」ではないのですが、紹介したく取り上げます。GoogleのKeepに保存したメモの量が多く、自身が興味深く読んだことがあらためて思い出されます。
この本を手にしたのは2014年で、読み切ったのは著者の亡くなった2021年だったはずなので「2022年に読んだ本」ではないのですが、紹介したく取り上げます。GoogleのKeepに保存したメモの量が多く、自身が興味深く読んだことがあらためて思い出されます。
2021年のこのブログでも文末のアフィリエイトネタに取り上げてました。
この本を読む前に読んでいた本「LIFE SPAN」が「老化は病気」という立ち位置で「人として生きられる限界まで、最大のパフォーマンスを発揮し続けられることを追求する」という趣旨であるのとは真逆に「死を受け入れ穏やかに、無理せず逝きていく」とでもいうような本となっています。この本の副題「『自然死』のすすめ」からも姿勢がうかがえます。先行きの見えてきたアラフィフのミノタケには非常に面白く、興味深い本でした。
・年寄りの最後の大事な役割は、できるだけ自然に「死んでみせる」ことです。しかし、「逝き方」は「生き方」なのです。今日は昨日の続きです。昨日と全く違う今日はありえません。
・訓練人生"になってしまいます。例えば、手足がもげた場合、誰ももう一度生えてくるとは思わないでしょうから諦めもつきます。だが、麻痺した手足は、もう一度動かせるようになるのではないかとの思いから、5年も10年も費やして、一所懸命にリハビリをしている人がいます。その人生を空費している姿は気の毒という外はありません。
著者は晩年を特別養護老人ホーム、いわゆる特養の常勤医師として長年勤められその体験からそれまで医師としてキャリアを積みながら感じてきた疑問に確信を得てそれを実践されてきた方です。
・できるだけ家族に負担をかけないためには、自分でできることは精一杯自分ですることです。利き手の側が麻痺している場合でも、もう一方が残っています。食べさせてもらうなど、もっての外です。どうせすることがないのですから、一回の食事に半日かかっても構わないのです。自分で食べられる形に調理を工夫することは、頼まなければなりません。日本人は、病気や障害を理由に、甘ったれて依存しがちです。また、それを許す傾向にあります。こういうことをしていると、欲しくない時にも、無理やり口の中に押し込まれるという"拷問”にかけられることになるのです。
・無理やり飲ませたり食べさせたりせず、穏やかな“自然死"コースにのせてやるのが本当に 思いやりのある、いい"看取り"のはずです。時には介護においても、できることであっても 控える方がよいこともあると考えなくてはいけません。
・それから死に際になると、呼吸状態も悪くなります。呼吸というのは、空気中の酸素をとり 入れて、体内にできた炭酸ガスを放出することです。これが充分にできなくなるということは、 一つには酸素不足、酸欠状態になること、もう一つは炭酸ガスが排出されずに体内に溜まることを意味します。酸欠状態では、前述のように脳内にモルヒネ様物質が分泌されるといわれています。柔道に 絞め技というのがありますが、あれで落とされた人は、異口同音に気持ちよかったといってい ます。 酸欠状態でモルヒネ様物質が出ている証拠だと思います。一方、炭酸ガスには麻酔作用があり、これも死の苦しみを防いでくれています。このように、死というのは自然の営みですから、そんなに苛酷ではないのです。痛みや苦し みもなく、不安や恐怖や寂しさもなく、まどろみのうちに、この世からあの世へ移行すること だと思うのです。年寄りの老衰死”には、このような特権が与えられているのです。だから、無理をして傍についている必要はありません。大声で呼びかけたり、身体をゆすったり、手を握っているなど無用です。たとえ傍にいたとしても、何もせずに、じっと見守るだけで充分。"そっとしておくのが一番の思いやりです。
・「天命に任せて人事を尽くせ」これは、一般的には「人事を尽くして「天命を待つ」です。しかし、私には、人事を尽くせば天命も変えられるはずというような、思い上がった響きが感じ取れ、あまり好きではありません。それよりも、能力一杯手抜きをせずに事にあたり、そして結果は気にしないという方が好きなのです。わが国では、天命を待つといいながら、結果が悪ければ人事を尽くさなかったせいではないかと非難されかねない雰囲気が感じられて嫌な のです。
他にもたくさん示唆に富む話が散りばめられています。図書館でも古本でもなんでも良いので「生き方」「活き方」「逝き方」に関心のある方は手に取ってみることをおすすめいたします。
7.世界2.0 メタバースの歩き方と作り方 佐藤航陽・著 幻冬舎
今回の読書感想で最後を飾るのはこの本です。ミノタケ的には昨年読んだ本ではこちらがナンバー1かな。今、職場の後輩に貸してしまって現物が手元にないのですが(笑)例のKEEPにとってあったメモを元に感想を書いていきたいと思います。
今も咀嚼しきれてないのですが、「メタバース、メタバース言うけどなんなん?」という方にオススメしたい本です。ミノタケがこの本に興味を持ったのは「メタバースとか言ってるけど、過去のセカンドライフや今あるMMOとかとどう違うんだろう?わざわざこんなに盛り上がっているのは、なんとなく自分自身が概念的な認識を間違ってる気がする」と違和感を覚えて理解を深めたいと思っていたところにYoutubeでホリエモンこと堀江貴文氏と著者の佐藤航陽氏の対談する様子を見て、「この人、ちょっと違うぞ!この人の本を読めば理解が深まる気がする!!」と思ったのがきっかけです。この方の「お金2.0」っていう本も読んではいたんですけどね(笑)
p.17①人間の拡張テクノロジーは常に、人間の能力を拡張し、個体だけではできないことを実現可能に してきました。蒸気や電力は人間の手足の動力そのものを何万倍にまで拡張させたテク ノロジーです。コンピュータやインターネットの本質は「知能の拡張」にあります。 コンピュータが発明されたことによって、人類は個体の脳をはるかに超える計算能力 を手に入れ、インターネットによってリアルタイムで目の前にいない他人とコミュニケーションが取れるようになりました。蒸気や電力といったテクノロジーが現実世界「動力革命」だとすれば、コン ピュータは脳内における「知能革命」ということができるでしょう。
「火薬」「羅針盤」「活版印刷術」をして3大発明と表現するのはよく耳にしますが、科学技術の発展を「人間の拡張」という言葉に置き換えて表現するのは新鮮で、しかも説得力を感じました。
p.32 かつてのSNSにおいてもそうだったように、日常的に3次元仮想空間でゲームをし ながら友達とコミュニケーションをして育った子どもたちが、数年後には大人になって 働き始めます。そのとき、 Instagram や Tik Tokで育った世代とは違った感覚をもって いるのは想像に難くありません。私がメタバースに大きな可能性を感じている理由も「子どもはすでに当たり前にやっ ていて、大人はピンと来ない」という特徴があるためです。かつてのSNSや YouTubeも全く同じでした。そして、メタバースは今の10代が大人になって社会で大きな力をもつようになったこ ろに本領発揮となり、今の私たちでは予測もつかないような使い方を見せてくれると予想しています。
今は「メタバース」という言葉もあまり取り上げられなくなってきました。この本でも予告しているのですが、「メタバース」という言葉が忘れ去られた頃にいつの間にか生活に浸透していて、「あれ?これってひと頃言われてた”メタバース”なんじゃないの?」みたいな感じになってるんじゃないですかね。あまりに生活に密着していて目新しくない頃に認識されるみたいな。
p.74 後述しますが、メタバースの本質は「インターネットが扱うコンテ ンツが2次元から3次元に進化すること」であって、VRデバイスの普及が遅れたとしても問題なく進みます。p.90 メタバースにおけるゲームは、あくまでも入り口にすぎません。その入り口から先に、 友達とのおしゃべりもあれば、ショッピングもライブイベントもあります。多くの人が 集まって日常会話が弾み、さまざまな日常を楽しむ新しい世界です。旧来型の思考にとらわれて「ゲームはゴールである」と結論づけると、メタバースの 流れを大きく見謡ってしまいます。
この本では色々面白いことが書いてあるのですけど、以下の部分も興味深かったです。
p.205 私を含めた現代の大人世代は、まだネットが存在せず、唯一の世界だった物理空間を 奪い合っていた時代を知っています。そのため私たち現代人には、何かを2つの対立構 造で考える思考の癖が染みついているのです。派閥に分かれ、いがみ合って領土を奪い合い、自分たちと考えが違う人たちを攻撃し て白黒決着をつけようとする。唯一無二の「土地」という物理世界の奪い合いを人類は 何千年にもわたって繰り返してきました。しかし無限に広がる仮想空間で世界を自由に創れれば、世界はたった一つの物理空間 ではありません。世界は何層も重なり合い、多元的に並存するものです。それぞれの生態系は過剰に干渉しすぎることなく、多様な生態系が広がっていくでしょう。
これまで領土(国家)を手にするのは一握りの為政者だけでした。メタバースが実現すると仮想空間の形で、個々人がそれを手にするようになるというわけですね。”仮想”ではありますが、通信・画像・計算の飛躍的処理速度の向上の実現によってリアルと変わりない手触りまで到達すれば、違和感なく受け入れるようになるのでしょうね。昨今流行りのChatGPTなどの生成AIなども実現のピースとして貢献しそうです。
著者はこの本で一番伝えたかったのは「世界の創り方」のノウハウだったそうで、そこに当時の流行りの”メタバース”を絡めたようですね。しかしモノを創り出すというのはなかなかに大変です。
著者はこの本で一番伝えたかったのは「世界の創り方」のノウハウだったそうで、そこに当時の流行りの”メタバース”を絡めたようですね。しかしモノを創り出すというのはなかなかに大変です。
p.198 前述のとおり、設計者が改善を繰り返しても、生態系 は直線的には成長しません。すべての要素が噛み合ったタイミングで、指数関数的な成長を始めます。ですから何の成果の兆しも出ない日々であっても、開発者は延々と改善を続けなければいけないのです。そのときがいつ来るのかは、誰にも予測できません。永遠にタイミングが訪れない可能性もあります。経済合理性だけを考えるのであれば、メタバースへの 投資は割に合わないギャンブルかもしれません。メタバース構築を続けるためには、少なくとも生態系を創ろう とする人間に何年かかっても絶対この生態系を成立さ せよう」という強烈な意志が求められます。そして、この意志だけは他から借りてくることができません。経済合理性を超えた設計者の「意志」と、それを形にするための「知識」と、成果が 出なくても改善を繰り返し続ける「忍耐」が同時に求められる。新しい生態系を創る仕 事は、神の領域に一歩足を踏み入れるほどに難しいのです。
最後に著者の未来予測のコメントを一つ。
p.218 複数の仮想世界で生きていくのが当たり前になったとき、人間のアイデンティティや 精神は変容し、現代人の感覚とは全く別ものになっていくはずです。人々がスマホでTwitter や Instagram、Tik Tok を使いこなすようになってから、現 実世界がもつ価値は相対的に下がりました。リアルに喫茶店でコーヒーを飲んだり、レ ストランで食事したりする相手はガクンと減り、そのかわり何千人・何万人というフォロワーとの交流が活発化します。夫婦や友達連れで一緒に食事に来ているのに、目の前にいる人とは全く会話せず、目 すら合わせずスマホの画面に見入っている人も珍しくありません。近所のコンビニには スッピンで行くのにインスタの前では化粧をする人もいます。メタバースによって3次元の仮想空間ができ上がれば、最終的に現実世界の価値は今 の10分の1くらいに下がると私は見ています。
読んでるとグイグイ脳が柔らかくなっていくような本でした。とても面白い本で一番のオススメです(^^)
読んでいて一つビックリしたのはこの本に他の文献からの引用が殆どないのですね。大抵のこのような本には末尾に「どこそこから話を引っ張ってきました。」「これが根拠となる文献です。」と言った具合に参照した文献がズラッと並ぶものですが、この本にはそれがありません。
ということは、著者はほぼ自身の記憶を頼りに、また学んだことを咀嚼して自分の言葉に直してこの本を起こしているというわけですよね。とても頭のいい人なんだなぁ、とあらためて感心した部分でした。
読んでいて一つビックリしたのはこの本に他の文献からの引用が殆どないのですね。大抵のこのような本には末尾に「どこそこから話を引っ張ってきました。」「これが根拠となる文献です。」と言った具合に参照した文献がズラッと並ぶものですが、この本にはそれがありません。
ということは、著者はほぼ自身の記憶を頼りに、また学んだことを咀嚼して自分の言葉に直してこの本を起こしているというわけですよね。とても頭のいい人なんだなぁ、とあらためて感心した部分でした。